2011年10月17日月曜日

「生物時計はなぜリズムを刻むのか」レオン・クライツマン(著) の感想


生物時計はなぜリズムを刻むのか生物時計はなぜリズムを刻むのか
(2006/01/11)
レオン・クライツマン、本間 徳子 他

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生物時計について、現在考えられているメカニズムやその多様性、さらに医療への応用を概観した本。
特におもしろいのが生物時計の研究史で、実際の実験がどのように進み、生物時計への理解がいかに変わっていったかが図と共に叙述されている。

現在までの研究によると、生物時計はシアノバクテリアから人間まで生物の中でかなり普遍的なものらしい。

たとえばごく下等な生き物であるバクテリアにとって時計はどういう意味があるか。
たとえばバクテリアが窒素固定と炭素固定のような、一方がもう一方を抑制するような反応を行う場合、反応を時間的にずらすために使われているという説や、過去の地球において紫外線から身をまもるために必要だったという説がある。
人間や鳥のような動物では、脳の中のSCN(視交叉上核)が生物時計にとって重要であることが分かった。これを切除すると行動のリズムが取れなくなったりする。さらにSCN単体を移植するとリズムが回復したりもする。

生物時計はリズムを刻むだけでなく、光が当たることで時計を1に戻し、地球の周期に対応している。
光を感じるのは通常目だが、人間では錐体、桿体以外に、生物時計用の光を感じる細胞が目に存在することが分かった。
鳥などでは、脳に光が透けて、脳の一部が直接光を感じたりする。

さらにDNAレベルでも生物時計は確認されている。
たとえば名古屋大学の近藤孝男さんは、シアノバクテリアの3つの時計タンパク質を試験管で再現し、実際に時計として働かせることができたらしい(http://www.brh.co.jp/s_library/j_site/scientistweb/no55/index.html)。

ぼくとしては、生物時計というものの存在意義や、どのような生態の中で進化を遂げたかに興味を持ってこの本を読んだ。

現在までのところ、ほとんどの生物時計は光によってリセットされ、24時間や半年、1年など、太陽の周期というものが主な周期の要因らしい。
それ以外に生態の中で周期的なものはないのか。またそういった周期に合わせる生物時計はないのかが気になる。

たとえば食う食われるの関係の中で、周期的な同期というのはありそうな気がする。
食われる側は、同期からはずれようとし、食う側は逆に同期しようとするように思えるが、生物同士の関係を通した同期というものが、どのようになっているかはこの本では分からなかった。

関連過去ログ:日光の届かない洞窟魚も生物時計を持つらしい。

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