2011年10月7日金曜日

"昆虫未来学―「四億年の知恵」に学ぶ" 藤崎 憲治 (著)  の感想

昆虫は虫であり、虫は害虫といったイメージは未だに強い。
特に僕たちの生活の中で虫というと、家の中でゴキブリが走っていたり、クモが這っているのを見ることが多く、どうしても害虫としての虫のイメージが強くなる。

「昆虫未来学」では、こういった従来の害虫観から脱して、昆虫の利用や保護、さらには昆虫を工学などの視点からリスペクトし、昆虫から学ぼうという現在の潮流を紹介している。

明治以前も虫は恐れられていたらしい。
ただし地震や台風と同じ災厄として、避けられないものだと思われていたらしい。
明治以降、化学的な殺虫剤によって、虫は害虫として排除の対象となった。
虫の専門家でさえも、虫は根絶すべきものだと思っていたようだ。

しかしDDTの環境への影響を示唆する「沈黙の春」以降、殺虫剤の環境への負荷とともに、虫の環境への貢献が認識されてきた。
さらにここ最近では、「バイオミミクリー」といって、材料や工学の分野から見て、昆虫たちの体が持つ特性から学ぼうという動きが出てきている。

たとえばクモの糸の強度は、人間の作るナイロンよりも二倍も強く、これを真似ることで今までよりも便利な繊維を作ることができるかもしれない。

塔のようにせり上がったアリの塚は、室温と風通りなどの良い空調機能を持っている。
これを応用した建物が作られているらしい。

コガネムシのように光沢のある昆虫の中には、蛍光や光の吸収からの色ではなく、光の波長をよい具合に反射する微細な構造によって、反射からの色づけがされているらしい。 これを応用して、色あせしない色素材料を作ることもできる。

全体としてインフォマティブな内容なので、文学的な意味の感想はありませんが、テーマにしたがってよくまとまっていて読みやすく、昆虫について包括的に学べる本だと思いました。

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