2011年10月16日日曜日

~現代経済学者の弁明~「ソウルフルな経済学」ダイアン・コイル著


ソウルフルな経済学―格闘する最新経済学が1冊でわかるソウルフルな経済学―格闘する最新経済学が1冊でわかる
(2008/12/05)
ダイアン・コイル

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2007年のサブプライムローン問題からリーマンショックまで、それが起こることをまったく予期していなかった経済学と経済学者には毀誉褒貶が向けられた。

今回の件だけでなく、過去に株の暴落や経済破綻が起きる度に、何度も経済学には疑いの目が向けられた。

また、経済学の教科書を眺めるだけでも多くの疑問が浮かぶ。
すべての情報を知り、自分が何が欲しいかを常に理解し、自己の利益のためにのみ動く主体。
こういっった多くのありそうもない仮定から、本当に経済についての分析を進めることが可能なのか。
また、他にもっといい仮定やモデルはないのか。

経済学に対しては、下手くそな予言者、難解な数式をあやつる人たち、科学になりきれない学問、のような多くの否定的な言葉がある。
しかし、著者はそういった経済学への非難は多くの場合誤解であるという。少なくともこの4半世紀の経済学は、過去の経済学では届かなかったところまで分野を広げ、より厳密に、実証的に経済を分析できるようになったという。

その原動力となったのは、コンピュータの発達と統計的な手法を駆使した計量経済学の発展であった。
言うなれば、昔ながらの合理的な主体や完全競争のモデルは、そういった手法が使えない時代の、妥協の産物であるとみることもできる。
たとえば50年前までは国のGDPを測るための統一的なデータは存在せず、経済成長についてのデータはこの20年にやっと揃いだした。

こうして今や、妥当性が疑わしい仮定ではなく、実際のデータを統計的に分析することで、現実の経済についてよし多くのことを知ることができるようになった。

さらに経済学に社会制度の考察を含めた公共選択論、スティグリッツらによる情報の経済学や、クルーグマンの産業立地に関わる貿易理論、カーネマンらの実験経済学、さらに脳から人の選好などを測ろうとする神経経済学など、すでに多くの分野が広がっている。

この本はそういった最先端の経済学を数式なしに著したものだが、理論の紹介のみならず、その意義や影響、欠点などを含んだ総合的な記述がなされている。
数式が多い本よりもむしろ内容は濃いかもしれない。
だからこそ、一般的な経済学の教科書を読んだ後に、この本を読むのが一番いいかもしれない。

1 件のコメント:

  1. こんにちは。私もこれ読んだのですが、
    50年後、100年後の経済学の姿が楽しみなかんじでした。
    現在の経済学の教科書とのリンクがあまり、
    よくわからなくて、把握するのが大変でしたが。
    あと日本の経済学っていうのも、世界の潮流からは外れているのか、良くわかんないと思いました。

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