2012年5月4日金曜日

ポアンカレ予想とペレリマン関連の本、解釈の違い。

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(2010/05/28)
ドキュメンタリー

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長年にわたってどんな数学者も解くことができなかったポアンカレ予想をついに解いたのはグレゴリ・ペレリマン。話題性があるだけにいろんな本やテレビ番組が出てきた。個人的には数学にそれほど詳しくないので、本やテレビの分かりやすい解説から、ポアンカレ予想とはどういうものか、ペレリマンとはどういう人物で、なぜフィールズ賞などを辞退し、どうして現在はロシアで人と関わらないで生活しているかなどの情報を知った。

最初に見たのが上の「ポアンカレ予想・100年の格闘 ~数学者はキノコ狩りの夢を見る~」だった。この番組ではペレリマン以前にポアンカレ予想に取り組んだ数学者の話に多くの時間が割かれていた。そういった数学者の多くの人はポアンカレ予想を解こうと数学にのめり込むあまり心を病んでしまったという。最終的にポアンカレ予想を証明したペレリマンもまた心を病んでしまい、そのことがロシアで人と関わらなくなった原因だという流れになっている。
さらに番組中で、ペレリマンがアメリカに行ってポアンカレ予想をいかに解いたかを学会で発表する場面がある。その学会を聴講した他の数学者たちはペレリマンの取った方法に驚いたという。なぜならポアンカレ予想はトポロジーという数学分野の問題であるのに、ペレリマンは微分幾何学を使って説いたからだ、と番組では説明されている。

でも類書の「完全なる証明」と「ポアンカレ予想―世紀の謎を掛けた数学者、解き明かした数学者」を読むと、ペレリマンが人との関係を閉ざした理由ははっきりしていて、本人の証言もあるようだ。どうやらペレリマンがポアンカレ予想を証明した後に起こった世間のさまざまな反応、特に数学界においてペレリマンが不道徳だと感じた出来事が多かったことから数学界に失望したらしい。
たとえばハミルトンのリッチフローという手法を拡張したことが、ポアンカレ予想の証明の具体的な内容だが、ハミルトン本人はペレリマンに先を越された悔しさからか、あまりペレリマンの講演に出席したり質問したりせずにいたらしい。このことがペレリマンからすると不誠実に映ったようだ。もっというと中国人の朱熹平と曹懐東がペレリマンの功績を横取りするかたちで自分たちがポアンカレ予想を証明したと語るなど、スキャンダルも多かった。こういったこともペレリマンが数学界に失望した理由かもしれない。

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また 「ポアンカレ予想―世紀の謎を掛けた数学者、解き明かした数学者」を読んでみると、ペレリマン以前から、ハミルトンがリッチフローという微分方程式や熱という考え方をトポロジーに応用している。ペレリマンの仕事はそのリッチフローの方法のうち、葉巻型と呼ばれる形がトポロジーに応用できてないという欠点を克服したりしてハミルトンの路線を完成させたことにあるようだ。もしそうなら、NHKの番組で、微分幾何学をトポロジーに応用したことがペレリマンの革新的なところであったというのはミスリードなのかな、と思った。ちなみにエントロピーという物理学の考え方を取り入れたのはたしかにペレリマンの斬新な点ではあるみたいだけど。

2 件のコメント:

  1. ペレリマンは発狂したとの情報があります。
    絶対を論理的に解いた(あるいはそう思った)偉人達が絶対と同化したときに発する「自分は神だ」と語ったそうです。
    狂い死にしたニーチェとよく似てます。

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  2. 世紀の難問であるポアンカレ予想を証明したのだから、その素晴らしい業績に比べたらフィールズ賞だの賞金だの、教授のイスだのなんてものは陳腐すぎてどうでもいいことなのかもしれない。
    天才とは変人が多いといいますし、一般の人が彼の心を理解するのは一般の人にポアンカレ予想を理解させるくらい難しいことなのかもしれない。
    ”単連結な3次元閉多様体は3次元球面 S3 に同相である”
    この時点でもう何が何だか・・(

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