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2012年2月18日土曜日

光から見た不確定性原理

ハイゼンベルグの不確定性原理は有名です。自分自身おおざっぱな説明として、運動量と位置の両方を正確に知ることができないという原理だと聞いています。式で書くと「Δx・Δp = 1/2ℏ」となります。
最近ブルーバックスの『高校数学で分かるシュレディンガー方程式』を読んでいたら、不確定性原理の他のやり方での説明がありました。
パルスというものは一瞬だけピッと立ち上がる波で、これが光の波だったりする場合、その時間が短ければ短いほど短い時間を測定することができるようになります。しかしこのパルス、数学的にどのように作るかというといろいろな波長の波を重ね合わせる必要があるらしいのです。波のエネルギーの幅を持ったものであればあるほどパルスの時間は短くなる。
ということは、パルスのような波の時間の短さとエネルギーの幅は相反する関係にあるということになります。
結局エネルギーの幅をΔE、パルスの時間をΔtとすると、上の不確定性原理に似た式「ΔE・Δt ≒ ℏ」のようになるようです。
ほぼ本からの引用ですが、これは光の波長から見た不確定性原理と言えそうですが、こちらの方が理解しやすいように思えます。

2012年1月5日木曜日

モーペルテュイの最小作用教 最小作用の原理と最善世界


数学は最善世界の夢を見るか?――最小作用の原理から最適化理論へ数学は最善世界の夢を見るか?――最小作用の原理から最適化理論へ
(2009/12/18)
イーヴァル・エクランド

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『数学は最善世界の夢を見るか』イーヴァル・エクエンド(著)では、モーペルテュイという人物をハイライトにしてニュートン力学から解析力学、カオスや量子力学など近代物理学の歩みを描いていました。
モーペルテュイという名前は初めて見ました。18世紀の有名なライプニッツやヴォルテールと同時代に生きていて、ニュートン力学とデカルト力学の論争(地球が南北に長いのか東西に長いのか)を確かめるために北極まで探検をしたそうです。彼の身分はベルリン科学アカデミーの院長というとても高いものでしたが、性格は謙虚さに欠け、敵も多い人だったようです。

このモーペルテュイですが、光は最小時間でたどり着ける経路を通るというフェルマーの原理に触発されて、最小作用の原理が世界を支配していると考えます。つまり神は世界のあらゆるものの作用を最小にする、言い換えると最善となるように導いているというものです。いわば最小作用教とも言える着想です。この考え方は当時の人からも反発が大きかったようです。特に激しく攻撃したのがヴォルテールで、彼が書いた文書にはあらゆるレトリックを使ってモーペルテュイを皮肉っています。結果モーペルテュイは大言壮語の男として笑いものにされます。

話はこれで終わったかに見えますが、彼の考えた普遍的な法則としての最小作用の原理の考え方は、形を変えながらも後のオイラー、ラグランジュ、ポアンカレ、さらには量子力学のファインマンにまで引き継がれます。もちろん彼の考えた神による最善世界の導きは否定されています。たとえば最小作用が谷だとしたら、光や物体が通る経路は谷だけでなく峠のような中間にある踊り場になることもあります。これを停留点と呼ぶと、結局は最小作用というものは普遍的なものではなく、エネルギー的に留まるところがあればいいわけです。このことによって最小作用=最善というモーペルテュイの考えは大きなダメージを受け捨て去られます。

この議論は、経済学の成長理論に何か似てる気がします。経済が恒常成長する条件として、貯蓄性向sと資本係数vの比がちょうど労働力の成長率nと同じでなければいけない(s/v=n)という条件が導き出されるのですが、これらは相互に連関のないものとして扱われています。この一致は黄金率と言われ、偶然や奇跡以外には実現が不可能に見えます。しかしモデルを組み直して何かの調節メカニズムによって黄金律へ近づくという説明ができれば、この奇跡のような黄金率は奇跡でもなんでもないことが分かります。
いわばモーペルテュイはこういったモデルの再考やモデルの適用範囲の検討をあまりせずに、得られた結果から奇跡の存在を簡単に信じてしまったと言うことができると思います。

とは言え、『数学は最善世界の夢を見るか』では、モーペルテュイという人物の卑小さにスポットを当てながらも、近代科学の原理を着想した人としての評価は保持します。このミスマッチがおもしろかったです。

2011年10月18日火曜日

光速を越えるニュートリノ測定、原因は相対性理論の入れ忘れ?

CERNの実験で、光速を越えるニュートリノが測定されたということが話題になりました。
ニュースなどでは、従来の理論を塗り替えるのではないかという期待とともに、大きく報道されました。ただし専門家の間では、この測定結果をまともにとらえる人は少なく、むしろ実験のどこに間違いがあるのかを探すのに躍起になっているとも聞きます。

最近海外のウェブサイト(Speedy neutrino mystery likely solved, relativity safe after all)などを見ると、実験の間違いがどのようにして起こったのか分かったかも知れないと書かれています。

ただし公式見解ではないので、今のところ確証はないものだと思ってください。ぼく自身もこれに関する専門知識はありません。

それらの記事によると、間違いの原因はニュートリノ発射の始点と終点の時間を計る衛星のGPSが関係しているようです。
衛星と地球は共に動いているので、相対性理論によって異なる時間軸で動いていることになります。しかしそれを計算に入れないで時間を計ってしまったために、地上と衛星で時間がずれて、ニュートリノがたどり着く時間が実際より速く見えてしまったということです。

CERNの実験データではニュートリノが光よりも60ナノ秒早く測定されたことが問題となりましたが、相対性理論の影響によって、始点と終点で32ナノ秒ずつ早く見えてしまい、合計64ナノ秒ずれてしまうことになります。これを加味すれば、60ナノ秒早く測定されたことの説明がつくということらしい。

この記事が正しいとすると、時間の計算が間違っていたためにニュートリノが光より速いというデータが出てしまったという結論になります。
しかし疑問なのは、世界中の科学者が集まるCERNで、そのような間違いが見落とされるものかどうかです。CERNのチームとすれば、自分たちには間違いの原因が分からないから外部の人に協力を頼むというのは大変な不名誉のはずで、その前に徹底的に原因を洗い出しているだろうと思います。だから間違いの原因はデータ処理ではなく、実験装置や装置を動かす技術者のような、もっと制御が難しい微妙なものだと思っていました。
なので、この記事が事実だとしたら、なぜこのような見過ごしが起きたのか、実験チームに組織的な問題があるのかどうかが気になります。

また、もしCERNの実験結果が正しかった場合どうなるのかも気になります。
将来にわたって組織や装置を変えて何度も実験を繰り返しても、ニュートリノが光速より速いという結果が出た場合、物理学者たちはその結果を受け入れるのでしょうか。
ミリカンの電荷の測定なども、実際には不備があったことが明らかになっていますが、当時は受け入れられたといいます。
新しいパラダイムが受け入れられるにはどれくらいの証拠が必要で、どれくらいの不備ならば許されるのか。このCERNの問題を通して、これに関して何か得られればうれしいのですが。